最近宝塚の本屋さんに平積みされている『勇者たちへの伝言』。どうも西宮北口が舞台らしい。ということで、手に取ってみました。
物語は阪急電車から始まります。
「いつの日か来たみち」という電車のアナウンス(本当は「にしのみやきたぐち」と言っていたはず?)に導かれて向かったのは阪急西宮ガーデンズ。かつて西宮球場があった場所です。
そこにはひっそりと、阪急西宮ギャラリーという施設があります。
TOHOシネマズのすぐ横。私も映画館に行くときにいつも目にするけれど、「あんなところ行く人いるんかなあ」って眺めていただけでした。
なのでいまさらながら、訪れてみました。
小説の中に登場する、西宮球場の模型はこちら。よーくみると、ちゃんと人もいるんですよ。
阪急の施設だけあって、ちゃんと西宮北口の駅も再現されています。
今の駅ではなく、今津線が宝塚から今津までつながっていた時代のものですね。
神戸線とぶつかっているけれど、どうやって切り替えてたんだろう。
本数が今より少なかったのかなあ。
壁には阪急ブレーブス殿堂入り著名人のレリーフ。
上段左から二人目が、小林一三先生です。
ガーデンズ4階外の広場にはこんなものもありました。
西宮球場のホームベースがあった場所を示すプレートのようです。
階段の横にひっそりと、何の案内もないどころか、真横はごみ箱というかわいそうな状況。
写真撮るのがちょっと恥ずかしかった(・_・;)
野球には全く興味がなく、西宮球場と言えばかつて宝塚歌劇の大運動会が行われていた場所だなあという認識くらいしかないので、この本を読み始めてしばらくは「つまんないな~」なんて思っていました。
が、私が急に惹きこまれたのは、阪急ブレーブスの前身ともいえる球団が宝塚にあった!というところです。
宝塚に生まれ育ち、近所のことは大体知っているとおもっていたけれど、まだまだ知らないことありますね。
かつて東宝の撮影所があった場所が、それ以前は野球場だったそうです。(ファミリーランド時代には大人形館やスペースコースターがあったあたりだそうです)
球団の名前は「宝塚運動協会」
持ち主はもちろん、小林一三率いる阪急電鉄。日本初のプロ野球団「日本運動協会」が解散したあと、その活動を引き取ったのが阪急電鉄だったそうです。
しかし、宝塚運動協会があった当時、日本には他にプロ野球団がなかったこともあり、長くは続かず解散。
小説にはその当時の話や、元阪急ブレーブスの高井選手、バルボン選手、そして名応援団長の今坂氏が登場します。
あとがきによると、彼らに取材もしているようで、小説なのか、取材記事なのかわからなくなってきてしまいます。
しっかりと取材をし、事実に裏付けされた内容で書かれた小説ですが、一点だけミスを発見。
淡路島のところです。
映画館も喫茶店もないって書いてある。
このくだりは昭和27年~32年の間の出来事として描かれていますが、その当時淡路島には映画館がありました。
一番最初にできたのがどこかは分からないけれど、少なくとも、洲本のオリオンは昭和26年開業です。
残念。
淡路島の人が船でミナミへ行くというのは本当で、当時深日港と淡路島を結ぶ船がでていたので、淡路島の人はミナミへ行くのを楽しみにしていたそうです。でも、映画館はあったんです。(実は現在は淡路島に映画館はありません。)
小説だから別にかまわないんですけれどね。綿密に取材されているようなのに、なぜそこは適当だったんだろうって気になってしまいました。
小説としては、西宮や阪急ブレーブスがキューバや北朝鮮の物語と一本の糸で結ばれるようにつながっていて、面白いけれどちょっと無理やりすぎる感もありました。
面白かったし、新たな発見もあったし、阪急西宮ガーデンズのお散歩も楽しめたので、私としては十分満足できる小説でした。
【関連ページ(届いた本の感想)はこちら】
・いわた書店一万円選書に当選しました
・いわた書店一万円選書が届きました
・『オービタル・クラウド』
・『漂砂のうたう』