朝井まかてさん、最近お気に入りです。
江戸時代の町人らの生活を描いた作品が多く、高田郁さんととても作風がにていますね。
何冊か読んでいると、どの作品がどちらの作品だっけ?とわからなくなってきちゃいます。
さて、今回のテーマは何かなあと楽しみにページをめくると、なんと江戸城大奥。
えー、大奥ものってまかてさんらしくないなあ。一気にテンションダウン。家茂とか和宮とか徳川慶喜とか、そういう話は食傷気味。幕末物好きだけど、あっちでもこっちでも取り上げすぎですよね。
しぶしぶ読みはじめてみると・・・ヤラレタ!
やっぱりまかてさんでした。ただの大奥話じゃなかった。
主人公は大奥の「呉服之間」なる場所に勤めていて、日夜、天璋院篤姫のために着物などの縫い物をしていた、りつ。
おお!斬新。
そうか、大奥には縫い物を専門にしている人がいたのか。それも、大奥としての一部署ではなく、天璋院と和宮それぞれに「呉服之間」があるなんて。贅沢ぅ。縫うときの力の入れ方ひとつで、着心地が変わってくるなんていうことも知らなかったな。
物語は江戸城無血開城の最後の一日を描いています。
一生安泰の江戸城大奥に就職したはずなのに、幕府の崩壊、江戸城明け渡しによる失業という、大奥で暮らす女性たちにとっては寝耳に水の事態が勃発。
大奥を去らなければならないその日に、それぞれの思いによってこっそり城に残った、りつを含めた5人の女性。
それまで接点のなかった5人が、お城で共に過ごす最後の一夜。たった一日だけれど、5人にとってはとても意味のある時間。相手を知り、己を知り、新しい道を切り開いていく糧となります。
このあたりの人物描写が面白いですよね。それぞれのキャラクターが生きていて眼に浮かぶよう。江戸時代に生きる人々も現代に生きる私たちも、人は皆同じだなあって、ほほえましくもあります。って、現代に書かれた小説だから、本当のところはどうかわかりませんけどね。まかてさんの小説を読むと、この時代の女性たちが身近に感じられます。そして、生きる力を与えられるような気がします。欲をいえば、もう少し天璋院と和宮の心の交流も描いてほしかったかなあ。
朝井まかてさんの作品は、ラストがスカッとするのが好きです。
ところで、御中臈の名前が「ふき」なのは、やはり『和宮様御留』からとったのかな。和宮ときて「ふき」ときたら、誰だってそう思いそうですよね。考えすぎ?