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木内昇著『漂砂のうたう』にみる、愛奈姫のその後

投稿日:2016年10月8日 更新日:

時は御一新(明治維新)後10年。巷では「学問のすゝめ」が流行していた時代。
維新によって武士の身分を失い、出自を隠して遊郭の客引きとして生きる定九郎の物語。
一万円選書の中に入っていた1冊を偶然手に取ったら、『桜華に舞え』と同じ時代を描いた小説に巡り合えました。

この小説では、遊郭に生きる人々の生活を描きながら、同時進行で西郷隆盛ら薩摩兵児のニュースなどが伝えられます。
最後まで武士としての義を貫き通す薩摩人に対し、武家の出ながら百姓の子だと偽り場末で生きる主人公。
仲間うちには西の戦へ身を投じたものもいたけれど、定九郎は遊郭から出ない。「自由」を求めながらも、今の居場所を漂いゆれる日々を送っています。
同様に、遊郭という閉ざされた世界で生きる遊女たちがいます。
もうひとりの主人公ともいえる人気花魁小野菊は、良い身請け話があったにもかかわらず、それを断り遊郭に残る。
彼女の心の中には、別の形の「自由」があったのでしょう。

小説を読んで知ったのですが、明治5年に「娼妓解放令」が出され、遊女たちは年季明けを待たずに解放されたそうです。
けれど現実には彼女たちは遊郭(その当時は「貸座敷」に変更)からは出なかった、または一旦は外に出ても戻ってきてしまった。
理由は、突然解放されても新しい働き口もなければ住む場所もなく、結局外の世界では生きられなかったから。
まるで水から出たら生きられない金魚のように。
外に出る「自由」ではなく中に残る「自由」を選んだというべきか、しょせん自由なんて存在しないんだと気付いたというべきか。

「自由」とは何か?登場人物がそれぞれの自由について考え、もがき、漂い生きている小説です。

この小説、直木賞受賞作らしいけれど何が面白いのかよくわからない。つまらなくはないけれど、特にその良さはわからない。
と思っていましたが、こうやって感想を書いていると、じわじわと作品の魅力が感じられるようになってきた気がします。
噛めば噛むほど味が出るってところかしら。

さて、愛奈姫。
この遊女たちのようにかごの中の鳥ではなかったけれど、おそらく他の生き方を考えられなかったのでしょう。
身につけているであろうお茶やお花、礼儀作法、読み書きなどを教えて生きることもできたはず。
誰かに保護を求めることだってできたはず。
それなのに明治10年になっても街で立っている。
これは彼女が他の生き方を探す努力をしなかったということ。
生きる希望がなかったのか、知恵がなかったのか、姫のことはそこまで描かれていないからわからないけれど、この状況を受け入れてしまったんですよね。それもまた選択の自由。
誰かが姫を見つけて保護してくれるか、誰かに見初められて妻になるか、そういうことでもないかぎり、ず~っとあそこで生きていったんだろうなあって思います。悲しいけれど。

永輝があのとき、復讐に燃えるのではなく、姫を守ることを第一に考えていれば、貧しいながらも二人とも幸せになれただろうに。
冒頭に言っていた「姫をお守りする!」という約束は守りとおしてほしかったなあ。

90分のお芝居のなかで、愛奈姫という存在を中途半端に出してしまったこと自体に問題があるんですけどね。
きほちゃんに何か役を与えるという以外に意味はなかったはず。
設定に無理がありすぎましたね。

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