「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」のフレーズから始まる物語。
猫というテーマからしてあまり期待できないけれど、薄い本だし、有川浩さんの本なら軽く読めるしまあいいか。
と、勝手に想像して、まんまとヤラれました。
有川さん恐れ入りました!!
※ネタバレ注意!!
予想外に深かった
最初は名前のなかった野良猫が、飼い主と出会い、名前をもらい、旅をする物語。
冒頭のあたりを読んで想像したのはこんなストーリーでした。
ざっくりいうと間違っていないけれど、そんな単純な話ではなく、この短い小説の中にたくさんの人の人生が描かれていました。
う~ん、さすがは有川浩。深い!!
決して分厚くもない一冊の文庫本。この中に詰まっている様々なドラマ。こんなに情報量があるのに、うわっつらをなぞるという程度のものではなく、一人一人の背負っているものがしっかり描かれていてなかなかに深みがある。
この本の中に出てくる人間はみんなやさしくてあたたかい。これがまたほっこりさせられますね。
ボリュームのある内容
人間の主人公サトルと、猫の主人公ナナ。二人(?)の旅を通して、サトルの人生を振り返りつつも今を描いた本作。サトルが過去に出会った人々を順番に訪ねていく過程で、サトルと友人の“過去”と“現在”を見ることができます。
サトルは小学生の時に両親を亡くし、おばさんに引き取られます。転勤の多いおばさんで、何度も転校を経験しているから、サトル一人の人生だけれど、かなりバラエティに富んでいるというのがポイント。
1冊の本で、たくさんの話を読んだような気分を味わえます、かといって短編小説を読んでいる感じではなく、物語がつながっているから、短編が苦手で長編が好きな私にも充分楽しめる。おそらく長編が苦手な人でも面白く読めるんじゃないかな。
本当によくできています。
最後の最後にまだこんなものが!!
何段階もの仕掛けがあるこの作品。最後の最後までやられました。
サトルの命が長くないということは、動物たちの会話を通して早くから想像ができているのですが、想像できてしまったがゆえに、それ以上の想像はしていなかった。サトルとおばさんの関係。この展開は予想していませんでした。
さすがにここは書けないかな。これ書いちゃうとこれから読む人の楽しみうばっちゃいますもんね。
最後は泣ける。とにかく泣ける。
世界は何でこんなに良い人と良い猫であふれているんだ!!!
この作品、絵本にもなっているし子供向けの文庫にもなっているんですね。舞台化もされて、来年映画にもなると。
なんとなく有川浩にしてやられた!!と思ってしまうのは、きっと私だけじゃないはず。