宝塚歌劇 月組

『瑠璃色の刻』脚本が・・・

投稿日:2017年5月7日 更新日:

ようやく観劇しました!!!・・・だけど、観なきゃよかったな。

たとえて言うなら、高級アイスクリームがあって、原材料もパッケージも作者のこだわりも、製造スタッフも、何もかもがすばらしいから絶対おいしいはずなのに、カップの表面のところをうす~~くしか食べさせてもらえなかった。みたいな不満が残る。

もっと奥までスプーン入れて食べたかった!!!これじゃなんにも味わえない!!

原田先生、演出はいいのに脚本がなあ・・・・次星組大劇場ですよね・・・。がんばってよ!!

原田先生の演出や世界観は面白い。

舞台装置の階段が面白い

舞台上にはぐるっと周りを取り囲むような半円の階段があります。

サン・ジェルマン伯爵の居城として今回使われているのはロワールにあるシャンボール城。おそらくレオナルドダヴィンチが設計した、現存するシャンボール城の二重らせん階段をイメージして作られたのだと思います。

階段が盆のようにぐるぐる回る装置は斬新で面白かった。

プロローグでみやるりが、ただ階段を上がって、また同じ道を降りてきただけの動きが、階段が回ることで、舞台をぐるっと一周しているようにみえました。

この階段に囲まれた部屋が、あるときはシャンボール城のサン・ジェルマン伯爵の部屋に、ある時はベルサイユ宮殿に、またあるときはパリの街にといろいろ姿をかえます。

ダンサーズも素敵

黒天使のごときダンサーたち。あるときはダンサー、おそらくある時は宮廷の貴族、そしてまたあるときは舞台転換要員となって働いていました。
狭い空間の中に密集して踊る感じとか、振付が興味深い。こうやって作られる原田先生の世界観がとても好きです。

音楽も素晴らしい

なんだろう。宝塚がようやく世の中の音楽に追いついたみたいな感じがしました。
演歌っぽい曲ではなく、すっごい今時な感じ。説明がむずかしい・・・

でも!!!

脚本がいまいち

必要なことがいろいろ描かれていない

そもそも主要3人の関係って?

みやるりシモンとれいこジャック。おそらくこの二人は強いきずなで結ばれていて、心からの親友なのでしょう。
敵対する立場になっても、最後の最後まで相手を思いやり、相手を売るようなことはしないんだから。
素晴らしいです。

なんだけど、その肝心な二人の絆が描かれていない。そこがないと折角の後半が光らない。だって前半観ててもそんなに特別仲よさそうに見えないし。ただ単に同じ旅芸人一座にいて、一緒に逃げてきたってだけで。海乃アデマールちゃんとも仲良しで、3人特別な関係なんですよね。そこのところもうちょっと膨らんでたら、すごいいい話になるのになぜ描かない?

例えば冒頭のサンジェルマンの城に忍び込むシーンでこんなセリフがあったら、2人の性格と関係性がわかって、観客としても心の準備ができるし、ラストの感動が膨らむのになあなんて思いました。

シモン「お前の臆病なところは子供のころからちっともかわらないな。いつもビービ―泣きながら俺の後ろについてきてさ。」

ジャック「うるさい!お前の方こそその無鉄砲なところちっともかわらないじゃないか。俺がそばについて止めてやらないと、何をしでかすかわかったもんじゃない。」

どうでしょう?この二言だけで、随分分かりやすくなると思いませんか?これでは演出家の意図と違ってしまうのかなあ。

一座の人たちが最後にちらっとシモンとジャックのこと案じてるのもよくわからない。裏切って逃げ出した二人ですよね。もしかしてこの人たちとも何かもっと深いつながりがあるの??わからな~い。っていうか、一座の人必要あった?もっと一座の露出を膨らませるか、バッサリなくしてしまうかしたほうがよさそう。今のままでは中途半端すぎる。今の状態だと、バレエのシーンもアデマールの存在も、なくても全然問題ないし。。

アントワネットとアデマール

マリーアントワネットがえらくアデマールに肩入れしてるんだけど、なんで?
そしてアデマールなぜ突然アントワネットとため口?いやため口になる状況なのはわかるんだけど、そこに至る過程がない。

そう、いちいちなんでも「過程」が不足してる。だから深みが感じられない。ほんの一言追加するだけでずいぶん変わったりするんだけどなあ。

既視感がありすぎる

100%脚本が悪いというわけではなく、今の月組でこれをやるとどうしても『1789』にしか見えないということ、ヒロイン(?)がオランプそっくりで、しかも演じるのが海乃美月ちゃんだということ。これも失敗の大きな原因でしょう。
本気で混乱しました。

ネッケルやルイ16世のセリフはベルばらで聞いたことのあるようなセリフだし、ルイは必ずあの話し方じゃないといけないのか???って突っ込みたくなったり、月城かなと演じるジャックはロナン・マズリエみたいだし、美弥ちゃん演じるサン・ジェルマンとマリーアントワネットの関係はまるでジャンルイファージョンとアントワネットとの関係。

極め付けは、公安委員。全身真っ黒の衣装に三色旗のたすき掛け。絶対この衣装じゃないとだめなの??月城さんが突然公安委員になってでてきた日にゃ、ピンパーネル団の扮装かと思った。

サン・ジェルマンなんてどの時代に登場させても良かったのに、なぜあえてフランス革命を選んだのか意味不明。

もうこの手の話しばっかり蕁麻疹でそうや。

っていうかサン・ジェルマンに問題あり

サン・ジェルマンなんておいしい題材選んでるのに、なぜかサン・ジェルマンが描き足りない。
いろんな人に見せ場を作ってあげるのもいいけれど、サン・ジェルマンなんて絶対的カリスマを、普通に描きすぎじゃないですか?

もちろん、シモンはサン・ジェルマンのふりをしているだけの旅役者だけれど、賢者の石に心を奪われて、自分を見失って、一時期は洗脳されたみたいに本物のサン・ジェルマンとしてふるまうわけだから、もっととびぬけちゃった人にしてもよかったのに。シモンとの二面性がなさすぎる。

いやもしかしたら原田先生はサン・ジェルマンをそういう風に描きたくはなかったのかもしれない。
でも、王も貴族たちもみんなが彼のいうことを信じるからには、それなりのカリスマ性があったはず。

賢者の石を持つと力を得ることができる。その代りに大切なものを失う。でもシモンは大切なものを失わなかった。そこんとこもっと心情を見せて!!!
良い題材用意して、良い曲や振付があって、演出も面白いのに、内容が浅すぎる。

主役をもっとたてて、ピラミッドの頂点として描いても良かったのに。みんながこれでもか!これでもか!と「単独初主演!!」って言ってるんだから。
まあ、脚本がいまいちでもそれを上回るスター性が出演者にあれば、そこのところ乗り越えられたかもしれないけれど、そんなカリスマスター今の宝塚にはいないし。

それでも白雪さち花さん演じるマリーアントワネットは素晴らしかった

既視感ありまくりでも、脚本いまいちで、演者がうまければ、良いものは良い!!と言える。
それを証明してくれたのが白雪さち花さん。

マリーアントワネットなんて宝塚で最多出演のキャラクターだろって感じですけど、さち花さんめちゃめちゃよかった。正直この公演で良かったのはこの人だけです。

最近よく描かれる若くて軽率できゃぴきゃぴしたアントワネットではなく、昭和の舞台に登場したような、落ち着いた包容力たっぷりの女性でした。ふわっとしていてメイクも優しげ。

聡明で本当はすべてを見通しているのだけれど、フランス王妃として、母親として、こういう生き方しかできないんだというのがすごくよく伝わってきました。ソロも圧巻で、ほぼ出演者全員でてるのかな?って場面で一人センターで歌うソロ曲は本当に素晴らしかった。古くて新しい、さち花さんオリジナルのアントワネット像に心打たれました。

この公演の本当の主人公はマリー・アントワネットだと思う。誰もがそう思ったはず。
そしてサン・ジェルマンの相手役もマリー・アントワネットだった。

だからフィナーレのデュエットダンス、みやるりと海乃ちゃんが踊っていることにすごい違和感。
いやいや、ここはどう考えてもさち花さんが出るところでしょ。

みやるりと海乃ちゃん、恋人同士でもなんでもないし。っていうかこの二人の関係ってただの同じ一座の人ってだけ?よくわからない。

フィナーレは本編と切り離して考えるということなんでしょうけれど、それならカツラ脱いで地毛のショートヘアーで踊るとかしてほしかったな。時間的に無理なんだろうか。

なんか疑問一杯のこの公演。私の貴重なチケット代返してほしいくらいだわ・・・。

まとめ

う~ん、なんだろうなあ。
脚本と、組と、出演者と。それぞれのタイミングが合ってないというのが今回の残念なところかな。

原田先生きっと頭の中にはもっといいものがイメージされているのに、それが2時間の作品の中にうまくまとめられてないんだろうなあ。だからアイスクリームの表面だけしか食べさせてもらえてないような不満が残る。

ツイートをみていると、公演始まってからもセリフが変わっていっているみたいだし、これから東京に向けても変更がありそう。もしもっと時間に余裕があったらもっと良い脚本ができてたんじゃないかなって思う。みやるりの個性に合ったものをあてがきしてほしかった。

そしてこれが月組じゃなかったら、こんなに『1789』とかぶることはなかった。

ちょっとずついろいろずれちゃった結果こうなったみたいな感じですね。

みやちゃんと月城さんはきれいだったし、アントワネット素敵だったし、海乃ちゃんはいつもより明るい笑顔を見せてくれたし、夢奈瑠音くんもかわいかった。出番少なかったけど、ロベスピエール宇月颯さんも、ネッケル輝月ゆうま君も見せ場があった。

なのになんだか消化不良~。

原田先生、とにかく次の星組がんばってください!!!もうそれしかいえない。

ところで・・・サン・ジェルマンが作る10年若返る薬(?)材料のところで「ベラドンナ」って言ってましたよね。ロミジュリによると、ベラドンナって飲めば呼吸が止まって死んだと同じようになる猛毒じゃなかったでしたっけ?

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