礼真琴主演『阿弖流為』の予習をきっかけに、高橋克彦の本を読んでいます。
『炎立つ』といえば、いまいちだった大河ドラマのイメージしかなかったけれど、阿弖流為が面白く、読みやすい文章だったのでためしに読んでみたら、これが思いがけずハマってしまって。
阿弖流為とリンクするところも結構ありましたよ。
分厚い文庫5冊を読むのは大変な労力が必要だったけれど、読み切った達成感と悲しくも希望のある終わり方に、出会えてよかった!と思えた作品でした。
結局東北の歴史というのは阿弖流為の時代から同じことの繰り返しなんですね。
黄金がとれるせいで狙われて、都から遠く離れているせいで理解されない。
阿弖流為・母礼と戦った坂上田村麻呂、藤原経清・安倍貞任と戦った源義家。立場上敵対していても相手を憎んでいるわけではなく、むしろ尊敬しあっていた彼ら。
そして、藤原秀衡と義兄弟の契りを結んだ源義経と、彼らを滅ぼした源頼朝。
阿弖流為と炎立つを続けて読むと、どのエピソードがどちらの話しだったかこんがらがってきました。
みずからは朝廷軍にむかって攻撃を仕掛けない蝦夷と、朝廷の命令だったり、自分のためだけに蝦夷と戦う源氏。双方個人的な恨みがあるわけでもないのに、なんで戦争なんてするんだろうってむなしくなりますね。
歴史小説とは虚実とりまぜて描かれているものだと頭では分かっているけれど、こうやって小説を読むとつい全てが真実のように錯覚してしまいます。とはいえ作者はおそらく相当調べたうえでこの小説を書いているだろうから、ある程度歴史に沿った内容になっていると思います。
面白いのは、小説に登場する地名の多くが今もそのまま残っていること。この小説を読んでから岩手の地図を見ると、至る所に小説で覚えた地名が出てきます。厨川は盛岡のすぐ近くで、東和は花巻、衣川は平泉にある。岩手というと石川啄木と宮沢賢治のイメージしかなかったけれど、この小説を読んで岩手の別の一面を知り、ますます興味が深まりました。
今年、3度目の岩手旅行に出かけようと計画中。アラハバキの大岩がある丹内山神社も訪れる予定。今から楽しみです。
『炎立つ』は、歴史として考えると面白いと言える種類のものではないけれど、常に攻められる立場にある蝦夷たちの力強い生き方や、物部氏による莫大な資金、都にも匹敵する規模の奥州の町、アラハバキの神という存在など、物語としては様々な要素があって面白く読み応えがある。
そんな小説です。
今年3月に出た高橋克彦氏の小説『水壁(すいへき) アテルイを継ぐ男 』も是非読んでみたいですね。他にも『天を衝く』『風の陣』と、高橋氏の本で読みたいものがたくさんあります。お財布と相談しながらちょっとずつ読んでいこうっと。