超久々に本のネタです。たまにはブックも書かないと、ブログ名に偽りありになってしまいますからね。
さて。
『風よ僕らに海の歌を』読みたかったこの本がついに文庫になったので、早速ゲットしました!
私が子どもの頃と今の宝塚は別世界。
古い瓦屋根の家や店が、狭い通路をいくつも挟んで密集していた駅前はソリオに。
路面にあって、地下の通路で宝塚線と今津線を移動していた阪急宝塚駅は高架に。
人しか通れなかった細い狭い宝来橋は車が通れるS字橋になり、川沿いにあった木造の古いふるい旅館「島屋」はワシントンホテルの中に。
立派な松の木があって、ちょっと無骨な、風情のあった花の道は人工的な土手になってしまい、2階建ての家が並んでいた場所はセルカに。
宝来橋と宝塚大橋にはさまれた武庫川の両岸は、今は以前の面影がほぼなくなって、別世界のようになっています。
そんな私が知っている古い宝塚よりもっと昔。戦前、戦中、戦後の宝塚を描いた小説が『風よ僕らに海の歌を』です。
宝塚南口にあるイタリアンレストラン「アモーレ・アベーラ」のアベーラさんがモデルになっています。
アベーラさんの最初のお店は、宝来橋の近く、おそらく今のソリオのどこかにありました。
私が小さかった頃はまだそこにあったようですが、全く覚えていません。
井戸を囲むように長屋があって、その一角にお店があったのだとか。
子どもの頃から聞かされていた、大劇場が進駐軍に接収されて、進駐軍の一家がによく遊びに来ていた話だとか、食料をたくさんわけてもらったとかいう話が、小説の内容と重なります。
大劇場や歌劇のエピソードも、いろいろ。
戦争中どう使われていたのかという描写はとても興味深く、大劇場で訓練していた兵隊たちが淡路島に渡るエピソードも聞いていた話と重なって、とにかくローカル。
あ~、これがあそこで、あ、この風景のことを言ってるんだなあと、映像が浮かんできて面白い。
街の描写に一箇所違和感があったものの、右とか左とかは立つ位置で変わるから、その感覚の違いのせいかもしれない。
基本的には事実に沿った形で書かれています。
地元民だけじゃなく、宝塚ファンのみなさんも、聖地ムラの歴史を知るのは面白いかも。
越路吹雪や岩谷時子、春日野八千代さんなど、宝塚のスターさんも続々登場。
日本中の誰もが知っているであろうあの方の若き日の姿も!!
宝塚ってすごい町なんだなあと錯覚してしまいそうな煌びやかさです。
宝塚大橋から宝来橋一帯に土地勘のある方が読むととっても面白いと思いますよ。
著者増山実さんは『勇者たちへの伝言』という阪急ブレーブスを題材にした作品で小説家デビューをされた方です。
『勇者たちへの伝言』では宝塚にあった野球場のことが書かれていて、これまた超ローカル作品でした。
次はなんだろう?宝塚で生まれたウィルキンソンかな?楽しみです!!