ああ・・・混乱
『フライングサパー』見てきました。
この作品は観る人を選ぶという感想を耳にするけれど、私はダメだった、選ばれなかったみたいです。
身体が受け付けない。
今後ウエクミアレルギーになりそうです。
先にお断りしておくと、決して駄作というわけではありません。
ただ、特に古くからの宝塚ファンの中には生理的に拒否してしまう人が少なくないように思います。
好みの問題。
別日に観劇した友人は「好き!」って言ってました。
大体彼女が好きというと、私は苦手であることが多いんです(笑)
まず私はリアルなお芝居が好きじゃない。
そこにひっかかりがある。
よく言うと斬新、新しい。
悪く言うと、これは宝塚ではない。
はい、そうです。
この作品やりたいなら外でやってくれ!と言いたい。
が、別の意見を聞くと、宝塚だからまだまろやかなのであって、外の舞台でこれをやると、きつ過ぎるものが出来上がると。
なるほど。
ストーリーについては、予備知識なく見ると正直面くらう。
でもちゃんと紐解けばシンプルな話だと思います。
私は結構早い段階で心を閉ざしてしまって、もう理解しようという気がなくなってしまいました。
ざっくりとした感覚でいうと、おなかが気持ち悪くなる感じ。
それは、いろんな違和感と、リアルなエグさからくるもの。
普通宝塚では死体の下はああはならない。ウエクミ先生絶対わざと。
そして終戦の月である8月にはちょっとしんどい&コロナ禍の今見るにはかなりしんどい。
違和感としては、不思議がいっぱいすぎる。
つじつまが合わないとかそういんじゃない。
なんか「歪み」がいっぱいあって、それが気持ち悪い。
すみれコードがエラーしてる。
というか、私の頭の中がエラーを起こした。
こんなん宝塚じゃない!!っていうのを徹底していればもっとわかりやすかったところを、宝塚でこれはちょっと・・・と思う中にも普通の宝塚なところもある歪み。
一人ひとりを見ると、真風さんはとても真風さんらしいし、まどかちゃんはまどかちゃんらしい。
芹香ちんも、紫藤ちゃんも、それぞれの個性にあった役になっているのに、全体を見ると宝塚じゃない感がある不思議。
その不思議を強烈に作っているのが夢白あやさん。
演技力が素晴らしすぎるのか?よくわからないけれど、宝塚の娘役としてはなかなかありえないような役柄に、ものすごく戸惑う。スマートだしめちゃめちゃ格好良いんだけどね。
外の舞台ではああいう女性役は普通だろうし、仮にまどかちゃんが演じれば宝塚っぽく、かわいらしさもあっての役になると思う。
なんとも説明が難しいけれど、私が感じる気持ち悪さの一番は、彼女のキャラクターにあるような気がします。
そして、過去の回想の場面を、(見間違えでなければ)本人たちが演じる時と、別の人が演じているときがあって、しかも夢白さんは過去と現在で別人みたいに違うから、同じ人物なのか、そうじゃないのかに迷いまた勝手に混乱。
ちょっとネタバレになるけれど、眠っている真風さんの横で踊る、芹香さんと夢白さんが、斬新で、何をしているのか、何を表しているのかよくわからない、ぞわっとする気持ち悪さがあったのに、次の場面からは普通の人で、あれはいったいなんだったのか??何かを見落としたのかもしれないけれど、最後までなんだかわからなかった違和感、
これは私の勝手だけれど、留依蒔世君と瑠風輝君が、どっちがどっちかわからなくなる混乱。
これは何なんだろう。
『キャプテンネモ』とか『義経妖狐夢幻桜』のような不思議な世界は受け入れられるのに、これは違う。
わからない。
変と不思議と普通がごちゃまぜ。
森見登美彦さんの小説読んだあとみたいな気持ち悪さがある。
キャストについていうと、芹香さんは格好良かった。
お医者さんの役というと、どうしても例のあれを思い出してしまって笑いそうになるのだけれど、今回の役は文句なしに格好良いです。
男役さんが腕まくりしてるのって、どうしてあんなに格好良いんだろう。
歌も良かったなあ。
真風さんとキキちゃんの、どこかひょうひょうとした持ち味が役にぴったりだったように思います。
そして星から組替えしていった紫藤ちゃんは、ちょっと大人になった。
昔のキラッとスマイルと紫藤ちゃんっぽさを取り戻した、キラキラ王子様系で素敵でした。
そしてそして、なんといっても今回のMVPはまっぷー。
やさしいお母さん役がびっくりするくらい似合ってた。
歌も素敵だったし、どこからどう見ても女役さん。
温かみがあって、男役にしておくには惜しいような。
このまま転向するのもありじゃないかって思う。
この『フライングサパー』は開演アナウンスからしていつもと違う。
言葉を短く区切って、ゆっくりと、低音ボイスで。アナウンスを聞いた時点で、何か、覚悟がいりそうな気がした。
作中、たくさんの、ウエクミの「わざと」が仕組まれてる。
事前に脚本の審査のようなものがあるのかどうか知らないけれど、よくこの作品を上演することをOKしたなあ。
私のような古いファンも、新しいものに対応していかないといけないのだろうけれど、いくらなんでも今回は刺激が強すぎた。
こういう舞台は、観たかったら宝塚の外に見に行けばいい。
同じ斬新でも小柳先生の作品は受け入れられるし、楽しいんですよね。
ウエクミ作品だって、いままでのものはどれも好きで、だから今回も観たわけだけれど、長年温めてきた作品だというし、こういう方向に進んでいくのだとしたら、私はもう観れないかも。
事前に『サパ系』作品かそうじゃない作品か、アナウンスしてくれんかな(笑)
そうじゃないとちょっと怖くてチケット買えない。
というわけでこれは成功なのか失敗なのか。
それもわからない。
ただ、高いところで、混乱している私たちを見下ろしてにんまり笑うウエクミの顔が目に浮かぶようで・・・。
終演後感じたのは、今こそ、生で「ゴッドオブスターズ」が観たい!!ということ。
毒のない、幸せなお芝居が観たい。