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軌道 ―福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い

投稿日:2021年4月8日 更新日:

松本創著『軌道 ―福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』読了。

JR福知山線(宝塚線)脱線事故を取り上げたノンフィクション。これは絶対読むべき一冊。

事故で妻と妹を亡くし、娘さんが重症を負った淺野弥三一さん。宝塚市安倉に住むこの方の視点を中心に、驚くほど客観的に事故を見つめ、遺族やJR両者のコメントを折り込み、さらに、技術に素人の読者にも読みやすくわかりやすく書かれていて、読むものを選ばないのがいい。

事故の後の年月、遺族が感情を抑え、どこまでも冷静に、“これから”の安全のために、事故の原因を追求するだけでなく、企業体質の改善、今後同じような事故が起こらないようにどうしていけばいいのか、など、JRに働きかけていく執念は凄まじいものがある。

同時に、これだけのものをまとめた著者の労力、筆力もすごい。

今も毎日通勤に使っている路線、しかも事故当日、事故列車の一つ前の同志社前行きに乗っていた身としては、自分事ではないけれど、他人事とも言えない事故。
改めて、もし1本乗り遅れてたら…と思うとぞっとする。

あの日のことは今も鮮明に記憶しています。
朝遅めの出勤で職場につくとなぜかテレビがついていて、はじめて事故を知ったこと。
スマホもない時代で、状況の確認もできないまま普通に仕事をして、夜は大阪市内にダンスを習いに行って、さあJR再開したかなあとのんきに帰ろうとしたこと。

ことの重大さに気づいたのは夜家に帰ってからだったかな。

沢山の人から、ガラケーの電池が切れるほど安否確認のメールをいただいてたのに、そこまでとは認識できてなかった。

その後、学生時代仲良かったバイト仲間の名前が、テレビに映る病院に運ばれた人の一覧のなかにあったり、同級生が大怪我を負っていたり(一度会って話す機会があったけど、うまくかける言葉が見つからず、おかしなことを言ってしまった気がする。これは今も大きな後悔として心に残ってる。)、他にも、一本の電車に驚くほどたくさんの知人やその関係者が乗ってたことがわかってきました。

それだけ、身近で起こった事故だったんです。

JRが再開するまで毎日、押しつぶされそうに混雑してた阪急に乗って、梅田から北新地の向こうまで歩いて通勤したこと、定期の払い戻しに並んでたとき、前の人が暴れたこと、毎日JRの職員さんが阪急の改札で頭を下げ続けてたこと(宝塚駅だけじゃなく、宝塚南口駅でも)、あれこれ思い出しました。

同時に、事故の「その後」について今まであまり考えたことがなかったことに気づきました。

ただ一つ、不満がある。

「かつて温泉や遊園地で賑わった郊外都市」と、宝塚を描写してること。
今も歌劇でにぎわっている町なのに、これでは賑わいは過去のことのよう。
さびれた感が・・・
作品の本質と全く関係のないところだけど、ひっかかった。
残念。あえて書く必要はなかったような。

それはさておき、文庫本になって手に取りやすいし、事故を風化させないためにも、是非とも読んでほしい。特に、沿線住民、沿線利用者は必読!!

この本を読んでたくさんの気付きがあったし、いろんな感情が湧いてきて、久々に本の感想を書いてみました。
もっと書きたいと思っているんですが、観劇の感想より、読書の感想って難しくて恥ずかしくって(笑)

ロミジュリの感想は、一度しか書かないままですが、いろんな方の感想をいっぱい拝読して、大満足で、おなか一杯で、それ以上に私が書くことなど何もなく、今もただ余韻に浸っております。

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